特定建設業許可とは?取得に必要な要件を解説!
特定建設業許可とは
特定建設業とは、発注者から直接工事を請け負った際に、1件の建設工事(元請工事)につき合計額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の工事を下請に出す場合、取得が義務付けられている許可のことです。
建設業種 | ~令和4年12月31日(従来) | 令和5年1月1日~(現行) |
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建築一式工事以外 | 4,000万円 | 4,500万円 |
建築一式工事 | 6,000万円 | 7,000万円 |
この建設工事の額は消費税込みの額で、元請人が提供する材料等の価格は含まれません。たとえば、発注者から2億円の建設工事を請負った建設業者が下請業者と1億円の下請契約を締結したとします。この場合、発注者から2億円の建設工事を請負った建設業者は、特定建設業許可が必要になります。
特定建設業の許可が必要なのは元請だけ
さらに、下請業者が孫請業者と下請代金5,000万円で下請契約を締結した場合は、この下請業者は特定建設業許可を取得する必要はありません。特定建設業許可というのは、直接工事を請負った建設業者が取得するものなので、下請業者は取得する必要がないからです。つまり、1次下請業者がさらにその下請(2次下請業者)を出す場合は、契約金額に関わらず『特定建設業許可』を受ける必要はないということです。
一般建設業と特定建設業の違い
特定建設業と一般建設業との違いを簡単に言うと、下請けに出す建設業者が発注者から直接工事を請負っている「元請」であるか否かです。発注者から注文を受けて、自ら施工する場合は、一般・特定どちらでも制限はありません。また、下請として請け負っている場合も特定建設業の許可を取得する必要はありません。
特定建設業許可の要件
経営業務管理責任者がいること
主たる営業所(本社や本店)には、経営業務管理責任者がいなければいけません。法人にあってはその役員、個人事業主の場合は本人又は支配人が当てはまります。さらに、一定の地位にいるだけでなく、一定の経験も必要になります。
以下のいずれかに該当している必要があります。
- 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者として経験がある
- 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務の管理した経験がある
- 建設業に関し、6年以上経営業務管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務の管理責任者を補佐した経験がある
専任技術者が営業所ごとにいること
各営業所に専任技術者を常駐させる必要があります。
専任技術者とは、許可を受けようとする建設工事についての専門的な知識や経験を持つ人のことです。そして、営業所でその工事について専属的に従事している必要があります。以下に掲げるいずれかに該当する者で専任のものをおく必要があります。
イ | 法第27第1項の規定による技術検定若しくは一定の試験に合格した者又は一定の免許を受けた者 専任技術者になりうる国家資格一覧 複数業種に係る実務経験を有する者一覧 |
ロ | 法第7条第2号イ〜ハ(※)のいずれかに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、発注者から直接請負い、その代金の額が1件4,500万円以上(昭和59年9月30日までの経験については1,500万円・平成6年12月27日までの経験については3,000万円以上)であるものに関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者 |
ハ | 国土交通大臣がイ・ロと同等又はそれ以上の能力を有すると認めた者 |
※第7条2号
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
2.その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ,許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。以下同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は
同法 による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ,許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ,国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
財産的基礎があること
新規・更新・業種追加の際に、以下のすべてに該当する必要があります。
イ | 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと(=欠損比率が20%以下) |
ロ | 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められる者 |
ハ | 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること |
誠実性があること
契約から引渡しまで長期間かつ取引額が高額になる建設業については、取引上の信用が最も重要になります。法人である場合は当該法人・役員・政令で定める使用人(支配人・支店長・営業部長等)が、個人である場合は本人または政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。
ここでいう役員とは、取締役や執行役に加え、「相談役」「顧問」や役員と同等以上の支配力を有する可能性のある者として「総株主の議決権の100分の5以上を有する株主」及び「出資の総額の100分の5以上に相当する出資をしている者」にまで及ぶ。
不正な行為
請負契約の締結等の際における詐欺、脅迫、横領等の違法行為を指します。
不誠実な行為
工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について契約に違反する行為を指します。
その他本要件に抵触する行為
建築士法、宅地建物取引業法等により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって、免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者である場合。(国土交通省の建設業許可事務ガイドラインより)
欠格事由に該当しない
最近、許可申請後に役員が「実は欠格事由に該当するため不許可になる」といった事案が増えているため、必ず事前に確認するよう注意しましょう。
1 | 破産者で復権を得ない者 |
2 | 不正の手段で許可を受けたこと、又は営業停止処分等に違反したこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者 |
3 | 許可の取り消し処分を免れるために、処分にかかる聴聞の通知を受け取った日以後に、廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者 |
4 | 「上記3」の届出があった場合に、許可の取消処分に係る聴聞の通知の前60日以内に当該法人及び個人事業者の、役員及び令3条の使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者 |
5 | 法28条による営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者 |
6 | 法29条の4による営業の禁止を命ぜられ、その禁止の期間が経過しない者 |
7 | 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
8 | 建設業法又は一定の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
9 | 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 |
10 | 精神の機能の障害により建設業を適正に営むにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者 |
11 | 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が「上記1〜10」のいずれかに該当する者 |
12 | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
適正な社会保険に加入
令和2年10月1日から施行された改正法施行規則により、健康保険・厚生年金保険・雇用保険それぞれについて、その適用事業所に該当する全ての営業所に関し、加入の届出を提出していることが許可の要件となった(改正前は未加入であっても、許可を取得することが出来た。ただし、未加入の場合は、振興局等から年金事務所等への通報により、加入指導はなされていました)。改正後は社会保険未加入業者については、許可申請書が受理されないので注意が必要です。